恐怖!街中で「手相の勉強をしています」と声掛けてくる連中の正体

怪しい人

街には勧誘があふれている。

  • 「手相の勉強をしています」
  • 「アンケートお願いしているのですけど、ちょっとお時間よろしいですか?」
  • 「署名のご協力お願いします」
  • 「絵には関心ありますか?」

ほとんどの人が一度ならず、二度、三度と街頭や駅前などで声をかけられた経験があることだろう。そして誰しもがこう思ったに違いない。

「あの人って、なに者なの?」
「あの集団の正体は?」
「誘いについていったら、最終的にどうなるの?」

連日、テレビや新聞でキャッチセールスによる被害報道がなされているため、好奇心はあるけど怖くてついていけない。そんな人も多いはずである。

そこで私は彼らの正体を白日のもとにさらすべく、立ち上がることにした。声をかけられたら、必ずついていく。電話がかかってくれば、彼らのアポイントを快く了承する。勧誘者との出会いを大切にする生活を心がけたのである。

その結果…私は連れていかれた先で散々な目に遭わされることになった。あるところでは100万円のローンを組むように長時間にわたり説得され、契約を断るといきなり脅迫された。またあるところでは「私たちは宗教ではありませんから」と言いながら神様や因縁の話を延々とされた。最後には私の人生が病気や事故に見舞われる不幸極まりないものだと断言され、危うく入会させられそうになった。

ちなみに、これまで契約させられそうになったトータル金額は、ゆうに1000万円を越えている。もし断らずに彼らの言いなりに契約していたら、今頃は多額の借金を背負い、自己破産していた。しかしキャッチセールスや強引な商品営業の現場に潜入することで、彼らの実態と手法を充分に理解し、いかにすれば撃退できるのかを知ったことは収穫であった。彼らはマニュアルを用いて契約締結まで一気に持っていこうとする。それゆえ勧誘の流れがいつも同じパターンで終始してしまう。

よく勧誘先で見られるものの1つに、話の途中で「ちょっと、ごめんなさい」と唐突に席を立ち、奥のスタッフルームに消えてしまうことがある。しかも一度だけではなく、それを何度も繰り返すのだ。それはなぜなのか?

答えは、勧誘経験豊富な者からその都度アドバイスを受けているからである。そのために面白いことが起きる。彼らの発言が席を立つ前とあとでは、まったく食い違ってしまうのである。

たとえば、私がある女性勧誘員に宝石購入を勧められたときのこと。数十万円もする高いネックレスを訓分間も執勘に勧められた私は、その場から逃げるためにカタログに祓っていた安そうな宝石を指差した。

「これいいですね」

すると彼女はバッサリと私の発言を切り捨てた。

「これは全然あなたに合わないネックレスです。似合うのは、こっちです」

あくまでも高いネックレスを買わせようとする。しかし私がなかなか「うん」と言わないと、「ちょっと、ごめんなさいね」と立ち上がり、数分間奥の部屋に消えた。そして出てくるなり、こう言った。

「やっぱり、このネックレスはあなたにぴったりですよね」

なんだ、こいつは、と思ったが、「安い方の宝石を売っても構わない」という上司の許可がおりたのだろうなと考えたら合点がいった。そこで私は彼女の言葉の矛盾点を指摘して、購入することなく無事に帰ることができ
たのである。本サイトには万が一、勧誘場所に連れていかれたときに逃げ出すための方法も充分に盛り込んである。

いつ何時、やってくるか分からない悪質な勧誘者たち。そこで行われている手練手管な手法や巧みな話術、裏事情などをあらかじめ知って、いざというときに役立てていただければ幸いである。

「手相を勉強しています」の正体!

tsou

人の悩みをやけに聞きたがる女

「手相を勉強しています」

数ある街頭キャッチの中でも最もポピュラーなものだろう。しかし彼らの正体を知る人はほとんどいない。実際に手相を見せたとしても、なんの勧誘もなく終わったりと、不透明な部分が多いのだ。私はこの「手相を勉強しています」の正体を加数年前に知ることになった。しかも驚くべきことにこの団体はその頃と変わらぬ手法で、今も勧誘を続けているのである。

夜、7時過ぎに駅前を歩いていると、声をかけられた。

「今、生活意識調査のアンケートをしています」

しかし私は無視をした。なぜなら、彼らは決まってアンケートを終えると「自分たちのビデオ学習サークルにきてほしい」と誘ってくるからである。そのしつこさは、一度噛み付いたら離さないスッポン並みである。

しばらく歩いていると、また声をかけられた。一体、何人の人がアンケートをしているのか。回りを見渡してみると、、人以上の人々がボールペン片手に声をかけている。おい、こんなにいるのか!あまりの数の多さに面食らい、私は急ぎ足で入ごみの中をかけぬけた。もう大丈夫かなと思い、歩く速度を落とした。

「すみません」

また声をかけられた。

「あーまた、アンケート?しつこいですよ!」

私は声を荒げた。

「いいえ、私たちは、手相の勉強をしているんです。よかったら、手相を見せてもらえませんか?」
「えっ、手相?」

見ると、別代くらいの女性がニコニコしながら、立っていた。自分の思い込みで、冷たく当たってしまった罪悪感もあり、私は立ち止まった。

「お金とか、かかるんですか?」
「勉強のためですから、もちろん無料ですよ」

まあ、ちょっとぐらいなら、彼女の勉強のため、見せてあげてもいいか。そう思い、川手を差し出した。

「ところで、右手、左手、どちらですか?」
「右手でお願いします」

彼女は私の手相を見ながら言った。

「なるほど。感情線と頭脳線がかなり長いので、優しくて、頭の切れる方なのではないですか?」
「ほう、そんなことが分かるんですか」

誉められて、私はちょっぴり、気分をよくした。

「でも…かなり細かい線が、感情線を横切っていますから、精神的な面での障害が多いですね。もしかして、悩みが結構あるんじゃないですか?」
「悩みですか。そうですねえ、実は…」

と言いかけて、話すのを思い止まった。こんな街頭で、自分の悩みや弱みを話すのはよくない。そう考えていると、彼女は興味津々の顔で覗き込んできた。

「実は、なんですか?悩みは1人で解決せずに、相談すると道が見えてくるものですよ」
「道が見えてくる?」
「ええ、どんなことなんですか?」

こんなにも人の悩みを聞きたがるのはなぜだ。なにか裏がある気がする。そこで私は架空の悩みを作り出し、答えることにした。

「実は、彼女とうまくいっていないんです。それにこれから先、どんな仕事が向いているのかが分からなくて悩んでいます。手相からそのあたり分かりますか?」
「はい、分かります。それでは、そのあたりをよく見てみましょう」

彼女は真剣な目をしながら、いろいろと話してくれた。それから加分ほどが経っただろうか。突然、彼女は私の手相を覗き込んだまま、押し黙った。あれほど、喋っていたのに、急に黙られると不安な気持ちになる。自分の手相に問題でもあるのだろうか。すると私の気持ちを兇透かしたように、彼女は顔を上げた。

「今のあなた…すごい転換期ですよ!このときを逃したら、二度とないかもしれない時期に入っています。今、おいくつですか?」
「20代前半ですけど」
「もしかして、学生さん?」
「ええ」

そう答えると、彼女はがっかりとした表情を浮かべた。しかし私が「でも、学校にはほとんどいかずに、社員みたいに働いてるダメ学生ですけどね」と話すと、なぜか顔が急に明るくなった。

「借金なんてないですよね」
「あるわけないですよ」

そう答えると、彼女の目がキラキラと輝き出した。

「ちょうど今、姓名判断をしてくれる先生がこの近くにきていらっしゃるんですよ。3000円で見てもらえるんです。見てもらいませんか?」

彼女は姓名判断と書かれたチケットらしきものを見せてきた。そのとき私はパチンコで大勝した帰り道だった。どうせこの金はあぶく銭。それになによりお金の話をすると目が輝き出した彼女のことが気になる。どんなとこ
ろに連れていこうとしているのか。そこで彼女の誘いに乗ってみることにした。私の潜入癖は実に皿数年前からのものであった。

大病にもかかるでしょうし、事故にも遭うでしょう

事故

歩いて数分のビルに私は連れていかれた。ドアを開けて中に入ると、こぎれいな喫茶店のような空間が広がっていた。想像していた占い館にありがちな重苦しい閉塞感は微塵も感じられなかった。席に着くと、まずアンケートを書くように言われた。見ると、なんとなく、以前に道端で止まって答えた生活意識調査アンケートの内容に似ている。「興味関心のあるところに○をつけてください」とか「悩みの項目に○を」というところなどそっくりだ。

私はそうした警戒心もあって、あまり関心のない部分に○をつけた。最後に住所、氏名を書き込むと、私を連れてきた彼女はそそくさとそのアンケートを持って、奥の部屋へ消えていく。待つこと数分。彼女は占いの先生を連れてきた。訓代の女性だ。占いの先生というので、水晶玉やタロットカードでも持ってくるかと思ったが、そういったものは手にしてなかった。ただ紙と鉛筆を持っているだけであった。

「はじめまして、●●さんですか。いいお名前ですねえ」
「そうなんですか?」
「はい、とてもいいお名前です」

どこがどういいのか全然教えてくれないまま、彼女は質問してきた。

「ところで、あなたは、因縁という言葉を聞いたことがありますか?」

中学校で習う言葉である。

「もちろん、知ってますよ」
「因果応報は?」

それは、高校あたりの試験で出た記憶がある。

「ええ」と答えた。
「そうですか。因縁を信じますか?」
「まあ半信半疑ですね。でも目に見えない不思議なことはあるかもしれないとは思いますけどね」

すると、先生は大きく頷き、紙に「因果応報」と書いた。先生が言うには、「因」は原因の因、「果」は結果であるという。つまり物事に偶然などはなく、すべてになんらかの原因があり、それによって必ず結果が生じるようになっている。私たちの生活になにかが起きれば、その原因こそが先祖の因縁であるというのだ。分かるような分からないような話である。彼女はさらに続けた。

「今、あなたが抱える恋愛や結婚、自分の性梢の問題などは先祖代々受け継がれた名前から、その原因を探ることで、解決の道が得られていくのです」

私は小さく首をひねった。

「では」

と彼女は持参した紙を裏返した。するとすでにそこには私の名前と画数が吾かれていた。彼女はそれを見ながら、文字の隣に書かれた数字に赤ペンで○と△をつけながら説明を始めた。なにやら○が吉数で△が凶数らしい。数を示しながら、

「あなたは、とても陽気で人気者の方ですね」

ほめられて悪い気はしない。

「でも……」

先生は顔の表情を曇らせながら、数字と数字を線で結び合わせ、名前の上にたくさん線を引いていった。そしてずばり占った。

「かなり孤独な面を持っていますね。それに子縁が薄いなどの相も出ています。ここに引いた線が因縁線というものなのです」

そして1つ1つの線と数字の意味について語り始めた。そのほとんどが悪い話ばかりだ。女難の相があり、幸せな結婚は望めない。金のたまらない借財の相もあるから、私自身の因縁を変えなければひどいことになる。話を聞いているうちに、自分が悲惨な運命を背負った人間に思えてきた。それでも手を休めることなく、彼女は、

「ああ、そういえば、これも結べるわね。これも」

と、さらに線を引いていく。次の瞬間、私の名前をざっくり切るように斜めに線が引かれた。名前は無残に分断されている。

「これはね、殺傷因縁といって体を切られる線なのよ。今まで、手術とかしたことある?」
「手術ですか。そういえば、私は小さい頃、熱が出たため、扁桃腺を切り取ったことがありますね」
「やっぱりね。今はご先祖に守られているから、そのぐらいですんでいるけれど、このままの運勢でいけば、もっと体にメスを入れるような大きなことがあるかもしれませんよ」
「うえっ!」

私は驚いた。

「それは、あなたの先祖がいろんな因縁を作ってしまったためなのです」

動揺している私に追い討ちをかけるように、彼女は因縁深い人間の例としてある有名な誘拐殺人事件を挙げた。4歳の幼い子供を殺害した犯人のことを調べていくと、大変なことが分かったという。実はその昔、被害者の子供の先祖が、加害者の男の先祖を殺していたというのだ。

「この事件は先祖同士のいがみ合いが、子孫の代になって悪因縁となって引き起こされた例なんです」

この話を切っ掛けに、因縁による悲惨な人生を送った人の話を延々と聞かされた。今ならば彼女のペースにハマることもないが、なにせ大学生である。この先、自分自身にも事故や病気が起こりえると聞き、にわかに恐ろしくなってきた。そこまで怖がらせておいて、彼女はそっと救いの手を差し伸べてきた。

「でも、今日ここにきてよかったわね。ここには、こうした因縁から解放される開運の方法があるんですよ」
「どうすれば、いいんですか?」

半信半疑ではあるが、解決できるものならば取り払っておきたい。すると彼女は、

「ちょっと待っていてください。どの方法がいいか、お祈りしてご先祖様に聞いてきますから」

と立ち上がった。そして私をここに連れてきた女性がささやいた。

「よかったわね。私もこの先生に因縁の解決策を聞いて、ほんとに運勢が好転したんですよ。あの先生は本当にすばらしい霊能力者なの」

先生がいたときは無言だったが、いなくなると急に饒舌になる人だ。そして先生が戻ってくると、彼女はまた話すのをピタリと止めて、先生の話を頷きながら聞くのである。先生は席に戻ってくるなりこう言った。

「あなたの因縁を断ち切るための方法は、開運の印鑑を持つことです」

50万円ほどの印鑑を購入するように勧められた。いきなり金銭の話が出てきて私は戸惑った。しかもかなり高額である。因縁話で生まれた不安は拭い去りたいが、とても気軽に買うことのできるものではない。

「印鑑を購入したあとは20日間の捺印業が必要になります」

私はそのとき思った。もしかしてこれって週刊誌などで騒がれている霊感商法なのではないか。そう考えたら彼女たちの手口が透けて見えた気がした。そもそも私は声をかけられ、ここに連れてこられるまで、因縁などで悩んだことは一度もなかったのだ。ここで生まれた悩みを、ここで解決するというのはどうもおかしいじゃないか。ここにこなければ今頃はなんの心配もなく家でテレビを見ているはずだ。私はもはや自分の因縁などではなく、彼女たちのことが恐ろしくなった。ここにいたら聞きたくもない話を吹き込まれ、少しずつ洗脳されていくに違いない。結局、逃げるようにして、その場所をあとにしたのである。

団体の正体はあの宗教法人だった

かなり前の記憶なので、印象的な部分以外を詳細にお伝えできないのが残念である。しかし今もなおこの「手相の勉強」は行われている。これほど長期に渡って続けられているキャッチというのも珍しい。

調査してみると「生活調査アンケート」と「手相の勉強」を実施しているのは同じ団体であり、その団体は合同結婚式などで知られる宗教法人であった。最近では印鑑や数珠などを売りつけるだけではなく、数万円から数十万円もする自己啓発のビデオ学習を促すこともあるようだ。しかも彼らは宗教団体であるということを隠し、決して自分たちからは正体を明かそうとしない。

有名な団体であるから、そのイメージを持たれると商品を売りにくくなるのだろう。近頃も私の知人が街頭で「手相の勉強をしてるんです」と声をかけられた。彼は前々から声をかけてくる彼らのことを怪しんでいたから正体をたしかめてやろうと思い、見てもらうことにした。しばらく談笑し、打ち解けてきたところで、

「これってなにかの団体なんですか?」

と聞いてみた。しかし手相を見ている若い男性はやんわりと、

「個人で勉強していることですから、団体とかではありませんよ」

と否定したという。しかし彼は納得できず、それからも本当のところどうなのかと質問を続けたが、終始のらりくらりとかわされ、答えを引き出すことはできなかった。後日、私の方から彼に、彼らは宗教団体の一員であり、霊感商法で利益を得ることが目的なのだと話すと、ようやく合点した様子だった。彼がそのとき言った言葉が印象的だった。

「あの人たち、にこにこしているばかりで、ちっとも手相なんか見ていなかったんだよね」

彼らがたいして手相の勉強をしていないというのは有名な話である。

教訓

因縁話などを持ち出し、人を脅かす団体は要注意である。その後、怯え切った相手に差し出す救いの手こそ、彼らの狙いなのだ。